take You １
とうとう来たか、と、そう思ったアスランは、軽くディスプレイの端を叩いた。
議長からのお誘いのメール。
しばらくお呼びがなかったから、飽きられたかな、と思っていたのだけれど。
メールを「仔犬の仕上がりはどうだい？」で結ばれてしまったのでは仕方がない。
アスランは、ざっと暗記した内容を反芻しながら、とりあえず艦内通信でシンを呼び出した。
それを聞いたシンは、素っ頓狂な声を上げた。
「え？なんで俺？？」
「なんでって・・・たぶんこうやって遊ぶために、あの人、俺をお前に引き合わせたんだと思うぞ？」
「ええっ！？」
やはり、シンはまったく気付いていなかったらしい。予想していたとはいえ、あんまり間抜けな彼の反応に、アスランはひとつ、ため息をついた。
「そういうことだから。今夜はちゃんとシャワー浴びて来い。じゃないと俺がお前を洗う羽目になるんだからな」
そう言い聞かせれば、意に反してシンはぱっと顔を輝かせた。
「え、洗ってくれんの？」
「どこまで馬鹿なんだお前はっ！」
殴られた頭を抱えて、シンは心中、呟く。
だって、あれ、気持ちよかったもんな・・・
初めてした時に、洗ってもらったことを思い出し、ニヤニヤしたところを見つかって、また、シンはべちんと叩かれてしまった。
あー、ヤバイ
それが、今夜ギルバート・デュランダル最高評議会議長を前にして、シンがまず思ったことだった。
何がと言われると、困るけど。
たぶんヤバイ。
マジヤバイ。
昼と夜で、違う顔を持つというのは、シンにだってわかる。
実際、横に立って暢気に敬礼なんかしているアスランがそうだ。
でも、この間アスランとの間を取り持ってもらって、その後色々致しちゃった時だって、こんなにヤバイとは思わなかった。
きっと、あの時はアスランのことで頭がいっぱいで、わからなかったんだ。
うえー、どうしよう。
助けを求めるようにアスランを見上げれば、まるでなんでもないことのように、ぽん、と軽く頭を叩かれた。
「こら、挨拶くらいしないか。・・・すみません、礼儀がなっていなくて」
横で頭を下げるアスランを見て、シンも慌てて敬礼をした。
「え、あ、コンバンハ・・・」
「いや。まったく、いいコンビだね、君たちは」
それは、褒めてるんだろうか。
「まあいい。来なさい」
言われて。
アスランに、背中を押されて。
シンはおどおどと、ソファに体を伸ばすギルバートの前に歩み寄る。
「しかし、議長、こいつはまだ、その。いろいろへたくそで」
「ああ。君はするのは好きでも、させるのは苦手そうだね」
くすくすと笑う彼に、アスランはシンを見下ろして、困ったように言った。
「苦手なわけではありませんが。・・・やらせても下手なので、つい」
「やらせてくんなきゃ上手くなるわけないでしょう！」
思わずがなって、ぱこんと頭を叩かれる。
それを見た、ギルバートは笑って。
「そう、ちゃんと教えてあげなくては、出来ることも出来ないままだ。・・・見ていてあげるから、ちゃんとやってごらん。・・・アスランも」
そう言った権力者は、にこり、と、背筋を奮わせるような笑い方をした。
「見せてくれるという、約束だろう？」
「・・・はい」
こくりと頷いたアスランは、きょとんとしたシンの首根っこを掴んで、ぐいぐいとベッドの方へと引きずっていく。
「やり方、前に一度したからわかってるよな」
「やり方ってなんですか」
「とりあえず・・・口かな」
「あれっきりですけど・・・ぅわ」
ベッドの端に浅く腰掛けたアスランが、何のためらいもなくベルトを外し、前を開けたのを見て、シンは言葉を失った。
いつもの甲斐性なしっぷりは、一体どこへ！？
「どう、やるんだった？」
シンの背中をぞくぞくさせる、深くて艶のある、いい声。
見下ろしているくせに、なんだか上目遣いの翠の瞳は、濡れた様子できらめいて。
ごくり、と、生唾を飲んだシンは、ちょっと冷静さを失いながら、それでもいつもアスランがしてくれることを思い出し、彼の足元に膝を付いた。
うわー、すげーどきどきする。
赤い軍服の間から顔を覗かせたそれに、恐る恐る指を触れさせて。
それから、ちらりとアスランを見上げ、緩い瞬きに促されて。
「んっ・・・」
それに口をつけることに、ためらいはなかった。
だって、前にも一回やってるし。
それに、いつも気持ちよくしてもらってるんだから、たまには俺だってしてあげたい。
前にしたときを思い出し、とりあえず咥えて吸ってみる。
「ば、か。いきなりそれか？」
言われて、ムカついて。
じゃあ、と思い直して、してもらった時を思い出す。
えっと。確か、舌でこう・・・
形をなぞるように動かして、裏とか、先とか。
自分でしてもらって、気持ちいいところを、舌先で刺激して。
「もう少し・・・舌、ぜんぶ使えよ」
アスランの言いようは、やっぱりムカつくけど、息が荒くなってるから、ちょっとは気持ちよくなってるんじゃないかな。
「アスランは舌だけではなくて、口の中をぜんぶ使えるよ？」
外野から声がかかって、でもそれってどうやるんだ！？と、パニックを起こしそうになる。
「だから、下手なんですからいきなりそこまでは・・・シン、とりあえず息をしろ」
思わず深く咥え込みすぎて、アスランのもので喉を詰まらせかけたシンは、ずるりと抜かれてげほげほと咳き込んだ。
「馬鹿だな・・・」
「っ、ばかってっ！げふっ！」
食ってかかろうと無理やり顔を上げると、自分を見下ろすアスランの、なんだか凄く優しい翠と目が合った。
「もういい。来いよ」
言葉を失ったシンを、軽々と吊り上げてベッドへ放り出し、アスランは、この部屋の前で自分が締めてやった、シンの襟元へと手を伸ばす。
「え、あ、自分で脱ぎます」
慌てて起き上がり、ばさばさと制服を脱ぎ捨てて。
なんかすげー居心地悪い、と思って顔を上げると、議長の橙色の瞳と目が合った。
うわ。
図らずもストリップしてしまったことに気付き、シンは思わず赤面する。
「ほら、どこ見てる」
それでもすぐに、ころんとベッドに転がされ。
視界いっぱいに、大好きなアスランのキレイな顔。
「アンタの顔・・・・」
「そうだ。ちゃんとこっち見とけ」
言って。
アスランは、とびきりのキスをしてくれた。
「んくっ・・・・」
口の中、ぜんぶ愛撫されるようなキス。
シンは、あっという間にそれに夢中になった。
少し節のある大きな手が、体中を撫でてくれて。
もの凄く、気持ちいい。
「・・・お前、ほんとにキス弱いよな」
くふ、と息を継ぐついでのように呟かれ、シンは唇を尖らせる。
「アンタが上手すぎるんだろ」
「だから、誰と比べて」
ちゅ、と、ほっぺたにキスされて、凄く子ども扱いされた気がしてむっとして。しかしすぐにアスランの頭が下に引っ込んだので、シンはつい、身構えてしまった。
「うわアンタ・・・」
「ちゃんと参考にしろよ」
下肢の方で声がして、すぐに熱い口腔に含まれる。
誰かと比べなくたって、わかる。
この人、絶対上手過ぎる。
参考にする間など、あるわけない。
そう。シンは、あっという間にアスランの口の中に吐き出してしまっていた。
「どうだ？」
「全然わかんないんですけど・・・」
「そうか」
彼の唾液で濡れらそれに、あたたかな息がかかるようなところから、声。
また咥えられる、と思ったけれど、それは来ずに。
腰の下に手を突っ込まれ、シンは無造作にひっくり返されてしまった。
「なら、もうしてやらない」
「いいですよ。うわ」
その代わり、とばかりに、腰を掴まれて膝を立てさせられ、心の準備も出来ないままに、狭間の入り口をぺろりと舐められた。
ぎゃー！
「舐めんなよ！」
「ん」
「ふっ、わぁ！！」
「・・・変わらないねぇ」
遠くでくすくす笑う声。視線に気付いて赤くなる。
腰を上げて、そこを舐められて。
そんなところを眺められ、シンはわたわたと暴れようとして・・・アスランの大きな手に、ぐい、と頭を押さえつけられた。
「こら」
もう片方の手は、シンの尻の肉に食い込んでいる。それだけで、シンの動きを完全に封じてしまう人。なんだか凄くどきどきしてきた。
「大人しくしていろ。準備できないだろうが」
「だって・・・っ」
「おや、まだ、そんなに手をかけてやっているのかい？」
向こうから、呆れたような声がする。
「はあ。なにせ、コレですから」
「コレってなんですか！」
こんな格好で怒鳴っても、全然迫力ないけれど。
「もう少し、ちゃんと躾けないといけないよ」
「・・・はい」
躾しろってーー！
思ったとたんに、また、そこを舐められた。
熱い舌が、今度はぐいぐいと強引に押し開いていく。
「んんっ・・・っく」
抱かれる快感をを覚えた体は、その動きに感じて、震えて。
「きついだろうから、ちゃんと力抜いとけ」
また体を返されて、翠の瞳を見上げると、なんだかほっとするから、不思議だ。
いつものように足を開かれると、期待に思わず大きくなってしまったシンのものも、ふるりと震える。
それをくす、と笑われて、すぐに入って来たアスランに、シンは小さく悲鳴を上げた。
「ひぁ・・・っ！」
思ったよりも、辛くはなかった。
もう、何度もアスランを受け入れていたから、体が慣れてきたのだろう。
それでも、慎重に慎重に入ってくる熱さに、ぎゅうぎゅうとそれを与える人にしがみ付く。
「うんっ・・・」
「だから、力抜けって」
中ほどで、ゆっくりと揺すられて、ひうんと泣いて。ずるずると奥まで含まされれば、もう、喘ぐしかなくて。
「ア・・・は・・・・ひんっ・・・」
「イイか？」
耳元で囁く、ほんとにイイ声。余計に感じて、滅茶苦茶に首を振る。
「良くないか？」
残念そうに言われて、慌てて、もっと振った。
「ち、がっ」
「そうか」
今度は、嬉しそうな声。
鼻先に、キス。
「ひゃ」
同時に、すっかり感じ入ってしまったものに指を絡められて、器用な指でしごかれて。
思わず腰を揺すったシンは、すかさず感じる場所を内も外も擦られて、あっと言う間に上り詰めた。
「ぅあ・・・あっ」
一緒に、自分の中のアスランが、びくびくと震えてイくのがわかった。
「くうっ・・・・」
中に出されるのは、キモチワルイけれどもキモチイイ。
この人がイク時の、色っぽいうめきにぞくぞくする。
そうして、すぐにその唇にキスしてもらって。
シンは、状況を忘れて、幸せを噛み締めてしまった。